October 31, 2004

音楽の基礎

最近、音楽の勉強をしたい、という学生から「お勧めの本」ありますか?と聞かれました。
「スコアリーディング」を購入しようと思っているとも言っていて、これはきっと全音から出ている「スコアリーディング」のことだと思うのですが、あまりお勧めしないと伝えました。
安いし薄いし悪くは無いのですが、これだけをわざわざ買いに行くほどのものではないでしょう。どこでも売っているものではないので、気が向いたときに600円ぐらい出して買う、という感じですね。

お勧めの一等はなんと言っても岩波新書から出ている。芥川也寸志の「音楽の基礎」です。音楽の本を人に薦める時は絶対にこれを進めます。分かりやすく、構成もしっかりとしていてタイトル通り音楽の基礎を広くカバーしています。第1章が「音楽の素材」となっているのですが、第1章の中身はいきなり「静寂」で、次が「音」となっています。ここらへんからしても脱帽もので、文章力も抜群です。決して新しい本ですが今でも決して色あせていない、音楽をやる人なら誰にでもお勧めの一冊です。
この他同じ芥川也寸志の本で「音楽を愛する人に」という本があります。これはクラシックのさまざまの曲のうち100曲を一級の文章で面白く紹介している本です。どちらかというと雑学に近い本ですが、本を読むのが好きな人ならクラシック好きではなくても楽しめると思います。

この他にシンフォニアから出ているテオ・メリッヒの「オーケストラの知識」なんかも良かったです。アマチュアオーケストラの指揮者に向けた本を探していた時に出会った本で、選曲やスコアの勉強法といった指揮者なりたての時に読みたい情報が満載です。

指揮、と言えば外せないのが斉藤秀雄の「指揮法教程」ですね。これは永遠の本です。また実践編として高階正光の「指揮法入門」は練習方法も載っていて、便利でした。斉藤秀雄について知りたければ中丸美繪(ナカマルミエ)の「嬉遊曲、鳴りやまず」を読むとよく分かります。

この他、一時期ベストセラーにもなって国際ノンフィクション大賞を受賞した「絶対音感」という本は、絶対音感という能力について知る上で参考になります。これは音楽ではなく文章のプロの本なので読むほうもぐいぐいと引き込まれていきます。絶対音感と戦争というテーマなんかは第2時戦争以後の世代にとっては忘れかけている、重要なテーマだと思います。

後、ギタリストなら現代ギター社より出ているアベル・カルレバーロの「ギター演奏の原理」という本はぜひとおもお勧めです。クラシックギターはセゴビアにより世界に紹介されて以後飛躍的な発展を遂げ日々研究されているわけですが、演奏方法の奥深さに驚かされます。でも、ちょっととっつきにくい本なのでそこらへんは覚悟してちょっとずつ読みましょう。

気になる本を紹介しようと思ったら長くなってしまいました。本当は指揮者の小澤征爾・佐渡裕・岩城宏之・フルトヴェングラーや評論家の吉田秀和、作曲家の武満徹・林光といった人々の著名な本もあるのですが、それはまたの機会ということで。
最後に、上に紹介した本をまとめておきます。

■音楽の基礎
「スコアリーディング」諸井三郎(全音楽譜出版社)
「音楽の基礎」芥川也寸志(岩波新書)

■指揮者向け
「オーケストラの知識」テオ・メリッヒ(シンフォニア)
「指揮法教程」斉藤秀雄(音楽之友社)

■ギターテクニック
「ギター演奏の原理」アベル・カルレバーロ(現代ギター社)

■他
「音楽を愛する人に」芥川也寸志(ちくま文庫)
「嬉遊曲、鳴りやまず」中丸美繪(新潮文庫)
「絶対音感」最相葉月(小学館)

投稿者 koma : October 31, 2004 12:07 AM
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